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01 1冊目 p.1
5月12日(水)
今日から、俺こと田中英夫の小学校の頃からの親友である岡田樹の観察日記をつけることにした。というのも、岡田が急に「立花さんに接近する」と高らかに宣言したからだ。
この立花遥さんとは、隣のクラスである2年6組にいる女子であり、岡田の想い人だ。幸運なことに現在彼氏はいない。それどころか、過去に彼氏はいたことがないようだ。岡田リサーチによると、告白されても全部断っているんだとか。
今までも立花さんに対する岡田の熱い気持ちは聞いていた。うんざりするほど。そのウザさといったら犯罪を間違えて犯してしまうんじゃないかと思うほどの熱量だ。この間見かけた痴漢のように、何かしでかしそうで本当に心配だ。
岡田が立花さんにお熱になったのは林間学校を終えてからだった。どうも林間学校で立花さんの美しい心? に気づいたらしく、それで恋に落ちたらしい。なんじゃそりゃ。確かに、立花さんは学年でもトップ5の可愛さだけどさ。
とにかく、そんな岡田はいつも語るだけ語って立花さんに近づこうとはしなかった。同じクラスじゃないから諦めていたのだろうか。よく分からないが、とにかく行動に移していなかった。移せば女子なんてイチコロな容姿だっていうのに。
いい加減、毎日の日課になっていた立花さん語りに文句を言おうかと思っていた今日、堂々の宣言が行われたわけだ。
「樹、急にどうしたんだよ」
そう俺が聞くと、岡田はこちらを見てニヤリと笑った。
「条件が揃ったんだよ、ヒデ」
どう考えてもアブナイ人の答えが返ってきた。普通なら気持ち悪いの一言だが、岡田が言うと決まっていて腹立たしいことこの上ない。
どうも確実にいける算段が立ったからこの宣言に至ったみたいだ。その本気が恐ろしいぜ、まったく。
その算段が如何様なものか詳しく聞かせてもらった。立花さんは文化祭実行委員らしく、そこをきっかけに一気に畳み掛けるとのことだ。上手く行くのか心配だが、最終的にはあの顔が助けてくれるだろう。とにかく甘い、女子受けのする顔をしているんだから。
初日なんで長くなったが、まあ、こんなもんだろう。岡田は良くも悪くも主人公格の男だから、文章を書く練習にはもってこいだ。面白い結末になったら、手直しをして、どこかに投稿するのも良いかもしれない。
5月13日(木)
今日は数学の先生が体調不良で休みになり自習だった。席が離れているのにわざわざこちらにやってきた岡田は「最近の素晴らしかった立花さん」について語り始めた。
周りに聞こえたら大分まずい内容だったが、隣の席の狩野さんの声の方が大きくて内容が漏れることはなかった。つーか、狩野さんももう少し声を小さくしろよ! 社会人の彼氏の金払いが最近悪い、なんてクラス中に聞かせる内容じゃないだろ……。クラスの空気が冷えたぞ……。
ってか、勉強しろって話だよな。定期テスト近いけど、今は、うん、忘れていよう。
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