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「行きましょうか」
「ですね。でも社長は?」
「何だ? トイレか?」
「いえ、食後の一服に行こうかと……」
「私はもう何十年も前にやめた。君たちもやめた方がいいぞ」
「はあ……」
「まあ私はトイレに行ってくるから、その間に行ってくればいい」
「はい! では10分後にここで!」
私と棚橋さんは屋外の喫煙所へ、社長は店内のトイレへと向かった。
「う〜ん、美味しい。美味しい物食べたあとの一服は格別ですね」
「だね。タバコの煙もウナギの香りがしてる」
「それはないでしょう、あはは」
私と棚橋さんはすっかり打ち解けていた。これからは会社の中で会っても気軽に話しができるだろう。それに、棚橋さん、良く見ると可愛い顔をしている。彼女いるのかな。優しいし頼りになるし、いるんだろうな。でもいなかったら……。
「どうしたの? 黙り込んじゃって。疲れた?」
「え! いえ、全然。私より棚橋さんの方が疲れたんじゃないんですか? 走り回ってたし」
「僕? まあ少し。でも温泉に入れば元気になるよ、きっと」
「ですよね」
「心配してくれてありがとう。……村瀬さんは彼氏いるのかな?」
「え……? いませんけど」
「そっか。それは良かった」
良かった? それはどういう意味? まさか、もしかして……。
「おっと、そろそろ行かなきゃ。社長待たせたらいけないよね」
「そうでした」
私は慌てて吸い殻を灰皿にいれた。社長がいなかったらもっと話しができただろう。ちょっと残念に思いながら待ち合わせの場所に向かった。
「社長まだみたいだね」
「そうですね」
社長はいなかった。歩くのがゆっくりだから時間がかかってるのだろう。
「でも、遅いですね……」
少し待っていたが社長は戻ってこない。
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