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「どうしよう」
「電話してみるよ」
社長にはベンチに座ってもらい、棚橋さんはバスに乗っているであろう同僚に電話をかけた。
「うん、そうなんだ……でもここには社長もいるんだ……そうだよな、分かった」
棚橋さんは困った顔をして電話を切った。
「何だって?」
「うん……高速だからUターンするわけにもいかないし、かといって次のインターで下りてUターンして向こうのインターでまた乗って……なんて事してたら今日の計画は丸潰れになっちゃうって」
「それはそうよね」
「だから次のパーキングで待ってるから、僕たちだけでなんとか来てくれって」
「えー、なんとかってどうするのよ。ヒッチハイク?」
「うーん、1人2人なら乗せてくれる人もいるかもしれないけど、3人だからなあ」
「だよね……」
だったらどうすればいいのだろう。歩く? 私たちだけならそれも可能かもしれないが、足腰の弱い社長じゃ無理そうだ。
「高速バスあるかなあ」
「あ、そうよね。ここ大きなパーキングだからあるかも」
「僕売店の人に聞いてくるよ」
棚橋さんはお土産物屋さんの方へ走って行った。
「若い人は元気だねえ。羨ましいよ」
社長が棚橋さんの後ろ姿を見ながら言った。
「私も若い頃は走れたんだがなあ」
「社長は陸上の選手だったんですよね」
「お、良く知ってるね」
「社報で読んだ事があります。県大会にも出られたんですよね」
「うん。もう半世紀も昔の事だがね」
社長と話していると棚橋さんが戻ってきた。
「向こうにバス乗り場があるって。時刻表ももらってきたよ」
「良かった。これでバスに戻れますね」
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