それは3人から始まった

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 バス乗り場へゆっくり歩いて行くとちょうどバスがやってきた。棚橋さんが社長の手を取りバスに乗った。私は後ろから見守りつつ乗車した。座席に座るとやっと安心できた。ちょっとしたハプニングも旅行の醍醐味。お土産話ができたというものだ。  バスは快適に走り続けた。トンネルを超え橋を渡りジャンクションを通り過ぎ……。 「あれ、目的地って、こっちでしたっけ?」 「え……え! 違う、こっちじゃないよ。さっきの分岐を右だよ!」  どうやらバスは違う方向へ進んでいるらしい。引き返して貰うわけにもいかず、降りるわけにもいかず。流れる景色を絶望的な気持ちで眺めた。  次の停留所で私たちはバスを降りた。ここは高速道路。さて、どうやってみんなに追い付こうか。 「すみません。僕がちゃんと行き先を確認しなかったから……」  棚橋さんはがっくりと肩を落としていた。 「いえ、全て棚橋さんにお任せした私もいけないんです。今後は協力させて下さい」 「そう言ってもらって気が楽になったよ。ありがとう。とりあえず向こうに電話してみるね」  棚橋さんはバスの仲間に電話をした。バスは次のパーキングで待っていてくれていたそうだ。 「うん、うん。分かった。何とかするよ」  棚橋さんは電話を切ってしばらく考えていた。 「何だって?」 「もう待っている意味もないから出発するって。で、僕たちはどうにかしてバスを追いかけてこいって」  日程は幹事さんがくれた”旅のしおり”を持っているからほぼ分かる。早く追いつけば観光もできるが、遅くなれば直接宿に行くしかない。最悪宴会には間に合いたい。 「早く追いかけましょう!」 「そうだね。とりあえず高速を下りて一般道に行こう。タクシーに来てもらえばすぐに追いつくよ」 「こんな山の中でタクシーなんて拾えっこないですよ」 「呼ぶから大丈夫だよ」 「こんな知らない土地でどうやって呼ぶの?」 「タクシーアプリで検索すればすぐ呼べるよ」 「へー、そんなのあるんだ。でもタクシーって高いんじゃないの?」 「3人で割ればそんなでもないんじゃないかな」  旅行という事で普段よりも多めには持ってきている。お土産代が減ってしまうのは残念だ。でもここでリタイアするわけにはいかない。明日はこの旅のメインイベント、明治村が待っているのだ。 「行きましょう!」
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