それは3人から始まった

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 恐ろしい事になってしまった。まさかこんな事になるとは。もしかしたら社長を置き去りにしたのは誘拐するためだったのかもしれない。  いや、そもそも誘拐目的ではなかったのかもしれない。社員旅行を利用して社長を置き去りにし、事故に遭わせるか行き倒れにし、社長を亡き者にする計画だったのかもしれない。しかし偶然にも私たちが加わってしまった。社長が安全に旅行に戻って来てしまっては困ると考えた犯人が計画を変更し誘拐する事にしたのかも……。  いやいや、そもそも3人も置き去りにするなんて考えられない。出発前に点呼確認するはずだ。まさか、棚橋さんも犯人の一味だとか? わざと社長と一緒に取り残され、隙きを見て社長をどうにかするつもりだったのかも。もしかしたら社長の昼食に何かを混入させたのかも。2階にいなかったというのは嘘で、トイレか何処かに監禁しているのかも……! 「うん、うん……え! それ本当? えー!」  電話を切った棚橋さんは呆然としていた。 「な、何だって? まさか犯人から身代金の要求が? それとも……」  それとも既に社長の身に何かあってその知らせが届いていたのか。 「社長は宿にいるって」 「……え!?」 「バスに乗って1人で来たって」 「えー! 嘘! 本当?」  社長はトイレから戻ったらちょうどバスが来たので乗ってしまったそうだ。そしてみんなとホテルで合流し、今温泉に入っているそうだ。 「……まあ、社長が無事で良かった」 「本当だよ。もし何かあったら僕たちのせいにされたかもしれない」 「は〜〜良かった〜〜」 「安心した所で、行く?」 「行く!」  私と棚橋さんは再び喫煙所に来ていた。不安から開放された一服は格別だ。 「でも僕たちを置いて1人でバスに乗っちゃうなんて、社長も冷たいなあ」 「本当。ここまで来られたのは棚橋さんのお陰なのにね」 「いや、村瀬さんがいたから社長も安心していられたと思うよ」 「そうかなあ。棚橋さんの名前はちゃんとメモ帳に書いてたけど、私の名前は覚えないまま。次会っても分からないかも」 「いや、社長はああ見えて結構キレ者だって噂だよ」 「えー、そうは見えなかったけど」  一服し終え、私たちはバスに乗った。今度はちゃんと行き先を確認したので宿には着くだろう。
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