0人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日、彼女に振られた。プロポーズは済み、もう結婚間近というときに…。
「わたし、好きな人出来ちゃった♡」
呆気なく、振られた。相手はイケメン、高収入。ハゲで頭の悪い俺には引き止める力はなかった。それだけではない。アラフォーにして、会社は倒産した。
「親父、おふくろ、すまない。会社が倒産した」
肩を落として報告すると、まさかの返事が…。
「あなたも大変ね。うちは貯金全部詐欺に取られたわ」
世の中、不幸は続くもの。これはもう笑うしかない。だから、俺は今、公園で鳩に餌をやっている。暇すぎて、ブランコを漕いで、子ども達の憩いの場を汚している。
クソクソくそっ!
「空から隕石でも降ってこないかな〜!」
やけっぱちで、大声で天に向かって叫んだら、空から羽を生やした子どもが落っこちてきた。そして、子どもは、フラフラしながらも、なんとかストンと地面に降り立った。
「びっくりした〜、ホントびっくりした〜」
その子ども、天使はしきりにガタガタ震えている。これは悪いことをした。
「すまない。大声を出して」
謝ると、ようやく天使は警戒心を解いてくれた。
「よいしょっと。外界に降りたし、お仕事頑張ろっ。でも待って、どうしよ…すっかり誰を連れて行くのか忘れちゃった」
天使は大慌てで、落ち着きなく飛び回っては、ジャングルジムや鉄棒などにあちこちぶつかって、騒がしい。
「僕ね、せっかく死者を天国へ送るため降りてきたのに、誰を連れていくのかすっかり忘れてしまったの…だから、一緒に探して欲しい」
うるうるした目でたっぷり涙をためて、こちらを見つめてくる。とてもいじらしい。かわいい。こんなの、協力するしかない。
「で、そのお客の特徴は何か覚えていないのか?」
天使は、暫く考え込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!