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「じゃあ雨野くん。これからもテレビで応援してますからね。天気予報当ててね」
さんざんお喋りをしてヨシコは9時になると去っていった。
祈祷師はその間に二杯目のパイナップルジュースを飲み終えるところだった。
『ありがとうございました』
青年雨野とリンのお礼が重なる。
「ではビジネスの話を始めましょう」
リンが声色を変えて言う。
「気象予報士をお探しということでしたが、僕がお役に立てるのでしょうか?」
「それはこちらの方からご説明を。シラー様」
なんのために気象予報士が必要なんだっけ?と改めて考えていると、窓の向こうに不穏な気を察知した。
そうだ、これだ。私を悩ませているのは。
「シラー様。何かおっしゃっていただかないと」
祈祷師はおもむろに窓越しの空へ右手をかざし、何かをつかんだように握ると手を振り下げた。
その動きと共に窓の外にスコールのような激しい雨が降り落ちた。
「名刺代わりだ」
気取って言うと祈祷師はまた空に向かって手を振った。雨は一瞬で止んだ。
呆気にとられ言葉を失う気象予報士の青年と呆れ顔のリン。
「むやみに雨を降らせてはいけないと先代が言っていたでしょう?ほら、急な雨で濡れて困っている人が」
「うるさい。1キロ先で降るはずだった雨がこっちで降っただけだ。なんら問題はない!」
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