3/3
前へ
/6ページ
次へ
「じゃあ雨野くん。これからもテレビで応援してますからね。天気予報当ててね」 さんざんお喋りをしてヨシコは9時になると去っていった。 祈祷師はその間に二杯目のパイナップルジュースを飲み終えるところだった。 『ありがとうございました』 青年雨野とリンのお礼が重なる。 「ではビジネスの話を始めましょう」 リンが声色を変えて言う。 「気象予報士をお探しということでしたが、僕がお役に立てるのでしょうか?」 「それはこちらの方からご説明を。シラー様」 なんのために気象予報士が必要なんだっけ?と改めて考えていると、窓の向こうに不穏な気を察知した。 そうだ、これだ。私を悩ませているのは。 「シラー様。何かおっしゃっていただかないと」 祈祷師はおもむろに窓越しの空へ右手をかざし、何かをつかんだように握ると手を振り下げた。 その動きと共に窓の外にスコールのような激しい雨が降り落ちた。 「名刺代わりだ」 気取って言うと祈祷師はまた空に向かって手を振った。雨は一瞬で止んだ。 呆気にとられ言葉を失う気象予報士の青年と呆れ顔のリン。 「むやみに雨を降らせてはいけないと先代が言っていたでしょう?ほら、急な雨で濡れて困っている人が」 「うるさい。1キロ先で降るはずだった雨がこっちで降っただけだ。なんら問題はない!」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加