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放課後の帰り道。
僕は、通りを挟んだ反対側の道をゆっくり遠ざかっていくその姿に気付き、少しドギマギしながら、ずっと目で追っていた。
少し離れているにも関わらず、ここまでいい香りが届いて来てるような気もする。
心ここに在らずになってしまっていた僕は、隣を歩く幹也の存在をふと思い出し、隣の幹也の横顔をチラッと盗み見た。
“幹也は気づいてないよな?
幹也が気づくと気まずいし、今日はガマンするか”
そう心に決め、目で追うのを止めてはみたものの、しばらくすると、やはり気になって目で追ってしまう。
“どんなにトリコにされてるんだ、僕は”
少し前に僕はこの歳になって初めて、それを体験した。
それはまるで媚薬のように、僕の心を溶かし、溺れさせた。
それ以来、今までの遅れを取り戻すかのようにどっぷりとハマり、まるでオナニーを覚えたサルのように、トリコにされてしまっている。
もう一度横目でその姿を探すと、僕と幹也が歩くスピードよりも少しだけ速いみたいで、少しずつ距離は開いてしまっていた。
“もういっそのこと、スピードを上げてとっとと遠くに行ってくれたら、諦めもつくのに…”
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