1人が本棚に入れています
本棚に追加
業務内容
「み、ミミックマン......」
「俺がつけた名前じゃないぞ? 勝手に呼ばれてるんだ。というかお前も名乗れ」
「あ、ごめんなさい。私の名前はユキです」
「あっそ」
そういうと、ミミックマンはダンジョンの奥深くに潜っていった。
「あ! 待ってください! 」
ユキはそのあとを追った。
「ったく、なんで付いてきやがる」
「このまま付いていけばクリアできるかもでしょ? 」
「......ズルいやつ」
ミミックマンは右の道に曲がった。
そのまま進むと、そこは行き止まりだった。
「あら? 行き止まりですよ? 引き返しましょう」
しかしミミックマンは、そんなユキの言葉に耳を貸さず、行き止まり周辺を見回し始めた。
「......ここ、いいな」
するとミミックマンは、担いでいた宝箱を壁際に置いた。中身は入っていないようだ。
ミミックマンは右手を、腰の左側に持ってきた。丁度刀を抜くような格好だ。
「......」
それを黙って見ていると、ミミックマンはゆっくりと抜刀する仕草を見せた。しかしあくまで仕草であり、そこに刀があるわけではない。
はずなのだが、ミミックマンの腰から、もともとあったように刀が抜かれた。
「......えっ!? 」
「うーん、まずまずだ」
「ど、どうやったんですか!? 」
「そりゃお前、宝箱職人が中身持ってねぇとまずいだろ」
「いやそういうことじゃ」
「まあまあ気にすんな。そういうもんなんだよ」
宝箱を設置し終えると、ミミックマンは行き止まりを引き返していった。ユキもそれについていく。
「けっこう進みましたよね。そろそろボスじゃないですか? 」
「察しがいいな。そのとおりだ」
先程まで暗闇を進んでいたが、二人の前に大きな扉が突如出現した。
「......おーい! いるか? 俺だ! 中へ入れてくれ!! 」
ミミックマンがそういうと、その大きな扉は二人を招き入れるようにゆっくりと開いた。
「じゃあ、行くか」
「き、緊張しますね......」
扉の向こうはとても広い部屋だった。高さは10、いや15mほどあった。
「こんなところにも宝箱を置きにくるるんですか? 」
「ああ、というか、本命はここのボスだ」
「ボスってまさか......」
ユキがそこまでいうと、ズシーンという地響きが聞こえてきた。
「ひえ! 」
姿を現したのは、天井ギリギリの大きさをしているドラゴンであった。
「で、でたぁああダンジョンのボスぅうう!! 」
大声を出しながら腰を抜かすユキに、ミミックマンは冷たく言った。
「うっせぇなぁ。安心しろ、ただの友達だ」
すると、ドラゴンは流暢な人間の言葉で話し始めた。
「おお、ミミック殿ではないか。仕事は順調かね? 」
「まずまずだ。今日はここの宝箱の点検に来た」
「おお、それはありがたい。ではぜひ頼む」
ミミックマンはドラゴンの後ろの方に鎮座している宝箱に歩いていった。
「うーむ、目立った汚れはなし」
今度は宝箱の蓋を開けた。
「中身も問題はないか? 」
そこには、伝説の鍛冶屋が作ったとされる剣があった。
「一応試しておくか」
するとミミックマンはその剣を取り出した。
かと思うと、抜刀した瞬間、ミミックマンは素晴らしい剣技を披露した。まるで舞を踊るような。
「す、すご......」
ユキは思わず呟いた。その呟きを聞いていたドラゴンは、それに勝手に答えた。
「それはそうだ。彼はもともと、かなり腕の立つ冒険者だったからな」
「冒険者だったんですか? 」
「ああ、しかしあることがきっかけでやめてしまってな」
「あることっていうのは......? 」
ドラゴンは静かに答えた。
「最強のスキルを手に入れてしまったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!