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業務開始
「最強のスキルを手に入れたって、それがやめる理由になります? むしろ続ける理由になりそうなんですけど......」
「それがだな......」
「おしゃべりがすぎるぞ。そこまでだ」
すると、宝箱の点検が終わったミミックマンが口を挟んだ。
「いや、すまんな。では人間の娘よ。この話はまた今度に」
「ええ、気になるんですけどぉ」
-地上-
「あの、ミミックマンさん? 」
「どうした? 」
「......なんで冒険者やめちゃったんですか? 」
歩いていたミミックマンの足が止まった。ユキはそれを後ろから見ている。
「......どうしてもそれが聞きたいのか」
「は、はい......」
「......はあ、ヤツから聞いたと思うが俺は最強といってもいいスキルを持っている」
そのスキルの内容について、ユキは少し見当がついていた。
「それは......? 」
「万物生成スキル。文字通り、どんなものでもこの手の中に出現させることができるスキルだ」
「そんなスキルをもったのに、どうして......」
「最初は俺も喜んで使いまくっていた。しかし、次第に能力の恐ろしさに気づいていった。これは人を狂わせる能力だ。俺は悪人で終わるまいと、他の冒険者の役に立つ宝箱を設置することにしたんだ」
一つ一つの景色が見えるような喋り方。ユキは思わず聞き入っていた。
そして、ある決断をした。
「あの! それ、お手伝いさせてもらえませんか!? 」
「は? 」
「ミミックマンさんの宝箱設置、手伝いたいんです! 」
「......危険なところにも行くぞ」
「大丈夫です。だって」
ユキはミミックマンを真っ直ぐに見据えた。
「ミミックマンさんが助けてくれるから」
「......フ。じゃあ行くぞ。ついてこい」
業務開始だ
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