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ミミックマン
町、フィールド、ダンジョン。場所を問わず存在するものがある。
宝箱だ。
ザコアイテムから最強装備まで、なんでも入っている宝箱。それを設置する職人がいることをご存知だろうか?
人々は、見たこともない彼のことを、宝箱に化けるモンスターにちなんでこう呼ぶ。
ミミックマン
-高難度ダンジョン-
地下に潜るタイプの遺跡系ダンジョンは、狭い分攻撃が当たりやすいが、逆に囲まれる可能性も高い。
この女冒険者がそれだった。
「く、くそ......ちゃんと装備を整えてれば」
コケの生えた石のゴーレムが、彼女の周りを囲んでいる。今すぐにでも飛びかかってきそうだ。
剣を構える手は震え、目には涙を浮かべていた。
「もう......おしまいだ......」
ゴーレムは高くジャンプし、一斉に彼女を潰そうと試みた。彼女は死を覚悟し、目をギュッと瞑った。
しかし、彼女が遺跡の床にめり込むことはなかった。
彼が助けてくれたから。
「......え? 」
気がつくとゴーレムは、原動力を生み出していたコアを破壊されていた。そんなゴーレムの上に立っていたのが、彼だった。
「ふう、危ない危ない。冒険者のたまごを潰されるところだった」
青年、というには年老いていて、中年というには若く見えた。
「え......あの」
「大丈夫か? 怪我はしてないか? 」
「あ、それは大丈夫ですけど......」
彼女の目線は、彼の担いでいるものに寄った。
「なぜ、宝箱を持っているんですか? 」
「んあ? なぜって......仕事だから、だな」
「......いやいや! 意味がわからないです!! なんで宝箱を担いでるんですか? 仕事ってなんですか!? 」
「ああもう、いちいち説明しないといかんか? 」
彼は倒れたゴーレムから降りてきて、彼女の目の前に立った。
「いいか? このダンジョンの存在はどこで知った? 」
「それは、酒場に張り出されていたので......」
「だよな。じゃあお前こんな奥まで来たんだ。宝箱は開けたよな? 」
「ああ、はい。薬草と木の盾しか入ってなかったですけど......」
「......おかしいと思わんか? 酒場に情報が張り出されているぐらいのダンジョンなのに、初めてきたのはお前だけなのか? 絶対に誰か先に来てるだろ」
「......確かに! だとすると、なぜ宝箱は開けられていなかったのでしょうか」
「まだわかんねぇのか!? 俺が中身を補充してるからだよ! 」
「......え? 」
「よく聞け!! 俺こそが宝箱の設置職人、人呼んでミミックマンだ!! 」
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