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 あと一点が。    あと一点が、足らなかった。  遠いスキール音。飛び散る汗の感触、ゴムの焼けた微かな匂い。  今も、とても鮮明に。オレンジ色の一際大きなバスケットボールの刻む、不敵なリズムが心地良い。  練習通りに、ぼくは走る。味方のリバウンドが成功して、こちらのターン。攻撃陣の切り裂くドリブルを尻目に、スリーポイントラインの少し外側へ。  幸坂先輩がレイアップに飛ぶ。一瞬、反応の早い相手のディフェンスがコースを塞いだ。  ──ここだ。ぼくと、きっと先輩の思考も重なる。  シュートの一本、それで良い。それで決勝に行ける。焦りを演出する強引なレイアップだと、相手には見えていた筈だ。  ぼくの周りには誰もいない。ほんの微かな、自由な時間。  ボールが、ぼくの手元へ飛んできた。両手で質量と衝撃を納め、何千回と繰り返したシュートフォームを、身体が脊髄反射で導く。  指先まで宿る冴えた感覚。ぼくは確信を持って、ボールを空へ送り出す。  ──そこで、目が覚めた。
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