100-99

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 もしも、ウィンターカップ決勝に行けていたらどうなっていたのか。この一ヶ月、考えない時は無い。  あと一点が足りなかった。勝ち数的に引き分けでも良かったのに。ぼくに渡ったボールを、練習通りの角度で、練習通りの姿勢で放って。    ──リングに弾かれた音が耳から離れない。    『大丈夫、お前たちには次がある』  そう言って引退していった三年生の顔は見れなかった。端々の涙声が揺れるたび、後悔と罪悪感が針のむしろだ。  「はぁ……」  ため息が溢れる。吐く息は白く霞んで消えてしまった。  12月、歳の瀬。ひと月前の予選リーグ最終戦が、もう遠い出来事のよう。  あれから行けていなかった学校に、久々に来てしまった。夜も深い十二時間近。  とある、噂を確かめに。本当に、気の迷いとしか言えないけれど。    “この学校の駐車場、妙に深い藪の中に小さな祠が建っている。なにか、どうしても叶えたい願いがあれば行ってみるといい。きっと望みが叶うだろう”  そんな事を、誰かに言われた。誰だったろうか。同級生か、バスケの先輩か、古参の用務員の人か。  良くは憶えていない。けれどふと、なんの前触れもなく来てしまった。締め切られた校門を乗り越え、人気の消えた校舎を尻目に、駐車場を横切って。  藪の手入れはまばらだけれど、今は冬だ。歩くのは問題無い。しかも祠は、それほど木々の奥に隠れていたわけでもない。  見付けて欲しいと言わんばかりだ。こんなに見付けやすいのに、噂通りの効力があるとも思えない。  ぼくは、少し投げやりな気持ちで手を合わせた。叶うなんて思わない、そんな事は非現実的だ。けれども、願うだけなら良いだろう。  何処かで、除夜の鐘が響いている。  「叶うなら……やり直させて下さい……今度は、今度こそは……あのシュートを……」
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