20-16

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20-16

   ───ど、どうして、こんな……  ───ここが好きだから。学校が、本当に好きだったから。  ───早く……こっちへ!  ───ありがとう、月島くん……あなたもわたしの、素敵な思い出だから。  ───待っ!    何か、本当に嫌な事が起きている気がする。4限の小テストは満点を取れたし、購買の焼きそばパンは最後の一つを掴み取れた。  部活での紅白戦ではシュートも良く決まった。身体の調子が良い、というより、まるで“そういうもの”だと知っているみたいに。  「なんなんだ、一体……」  ひとり、帰り道の街中を歩く。日が落ちて、夜の中で街は明るい。行き交う人の足取りも軽やかで。  自分自身の気は重いけど。何か、そういう変な症状を疑ってしまう。  本当に、気味が悪い。現実感が無い。何より気味が悪いのは、ほんの一瞬ずつだけ垣間見る、経験していない光景のフラッシュバック。  ホラー映画さながら、脈絡なく覚えのない映像が視界の端を掠める。同じようなシーンの、同じようなシチュエーションを、何度も。  まだ始まってない、ひと月後に控えたウィンターカップ予選。これから数日内に起こる学校の行事、街のイベント、テストやら友達の会話。  紅白戦の最中でも、お構い無しに、だ。それでも、的確に動いてくれた身体は日頃の練習の賜物だろうか。  ──それに何より。どのフラッシュバックでも、必ず、“彼女”が現れる。  今、間違い無く視界に捉えた艶のある黒い長髪を、またフラッシュバックなのかと疑ってしまうくらいには。  「……花宮さん」    ──花宮 有。同じクラスの、ちょうど一つ前方の席に座る、細身の彼女。  目立たないひとだった。前髪で表情が分かりづらいというのもあって、──フラッシュバックを見る以前では──顔かたちに覚えが無い。  成績は、悪くなかったと思う。女子にしては身長があるから、女子バスケは合うんじゃないかと、ぼんやり考えていた程度はあるかも。    その彼女が、駅前の交差点に立ち尽くしていた。  俯いたまま、微動だにせず。
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