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歩行者信号が変わり、会社帰りの社会人、部活帰りの学生が入り乱れて車道を渡る中、花宮さんは動かなかった。佇まいだけでいえば、ひどく思い詰めているように見える。
ぼくは。
──花宮さん!
「……!」
また、脳みそを映像が駆ける。知らないはずの、知っていた景色が。
──せっかくだし、一緒に帰らない?
──え、あ、いや……わたしは……
──少し話もしたいしさ。コンビニで何か奢るよ?
──えっ、と。じゃあ……はい……
そんな、どこか微笑ましい様子が。
次の瞬間。
──ど、どうして?
──ごめんね、月島くん……わたし、もう
生きていたくないの……
目の前で、すり抜ける。
同級生の命が、地面に吸い込まれる。
いい加減、気付いてきた。これは単なるフラッシュバックじゃない。
荒唐無稽だけれど。あまりにも現実離れが酷いけれど、そうとしか思えない。
この光景はきっと、まだ起きていない、未来で起こる出来事なんだ。
それも一度や二度じゃない。なんとなく、ぼくはそう理解する。繰り返し繰り返し、その為の動きを練習する事と同じで。
無意識に、躊躇なく身体が動いていた。小テストの時も、紅白戦の結果も。
そこに当てはまる回答、動きを理解しているように行動して。チームメイトからは喜ばれたけれど、ぼくには気味が悪かった。
そして今、多分これが結論。昼間のは、白昼夢ではない。
これから起こる、きっと無数の未来の、どうしようもない結末。
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