20-16

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 歩行者信号が変わり、会社帰りの社会人、部活帰りの学生が入り乱れて車道を渡る中、花宮さんは動かなかった。佇まいだけでいえば、ひどく思い詰めているように見える。  ぼくは。  ──花宮さん!  「……!」  また、脳みそを映像が駆ける。知らないはずの、知っていた景色が。  ──せっかくだし、一緒に帰らない?  ──え、あ、いや……わたしは……  ──少し話もしたいしさ。コンビニで何か奢るよ?  ──えっ、と。じゃあ……はい……    そんな、どこか微笑ましい様子が。  次の瞬間。  ──ど、どうして?  ──ごめんね、月島くん……わたし、もう  生きていたくないの……  目の前で、すり抜ける。  同級生の命が、地面に吸い込まれる。  いい加減、気付いてきた。これは単なるフラッシュバックじゃない。  荒唐無稽だけれど。あまりにも現実離れが酷いけれど、そうとしか思えない。  この光景はきっと、まだ起きていない、未来で起こる出来事なんだ。  それも一度や二度じゃない。なんとなく、ぼくはそう理解する。繰り返し繰り返し、その為の動きを練習する事と同じで。  無意識に、躊躇なく身体が動いていた。小テストの時も、紅白戦の結果も。  そこに当てはまる回答、動きを理解しているように行動して。チームメイトからは喜ばれたけれど、ぼくには気味が悪かった。  そして今、多分これが結論。昼間のは、白昼夢ではない。  これから起こる、きっと無数の未来の、どうしようもない結末。
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