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「…………いや」
そんな、馬鹿馬鹿しい。ありえない事だ。
未来の出来事をフラッシュバックで見るなんて。しかもその結果として、顔見知りなだけの女の子が自殺する。
倒錯的すぎる。甚だありえない。ぼくは自分の幻を否定するように頭を振る。
そのまま、歩き出す。まばらに歩く通行人と同じように、交差点を過ぎようと彼女の隣を通りがかり。
──ありがとう、大切にするね……
その時、何をあげたのだろうか。コンビニでも手に入る何かだろうか。もっと後で、デートでもしたのか。
でも、少なくとも。
ほんの少し、満たされたように笑う彼女が。
「花宮さん」
「わ! あ、月島、くん? どう、したの?」
「また明日、学校で」
そんな、不細工なコミュニケーション。それだけ告げて、ぼくはさっさと歩いて去ってしまう。
格好悪い話しだ。不意打ちで話しかけて、言うだけ告げて道を行く。端から見たら、十分奇妙な男だと思う。
ついでに、せめてこれで、何か勇気づけられたなら良いなと、ワガママに思ってしまう。あの、儚げに、少しの満足を大切そうに笑う彼女が。
あんな酷く、いたずらに死んでいいわけが無いのだから。
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