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「あら、夏月くん。久しぶり」
息の乱れを整えながら、
出迎えてくれた彩子の母に頭を下げた。
「すっかりオトナになって。4年ぶり?
大学は大阪に行ったのよね」
「あ、はい。お久しぶりです。彩子は?」
「いるわよ。とりあえず、中に入って」
「お邪魔します」
玄関先で靴を脱いだ俺は
彩子の母に導かれ、リビングに向かった。
ドアの向こう側。
彩子はこちらを向いてソファに座り、
まるで俺が来ることを知っていたかのように
穏やかな微笑みを浮かべていた。
「夏月、久しぶり」
「うん」
27歳の彩子は
会わない間に更にキレイになっていて、
俺は一瞬、言葉を詰まらせた。
「もうすぐ大学卒業だね。おめでとう」
彩子に言葉をかけられ、苦笑いした。
「自分は結婚じゃん」
「おめでとうって、言ってくれないの?」
彩子は微笑みを絶やさず、俺を見つめた。
「今日は彼氏と会わないのか」
「会わないよ」
「じゃあ、ドライブしよう」
「いいよ」
彩子がソファから立ち上がり、
キッチンでお茶の準備をしていた彩子の母に
声をかけた。
「夏月と出かけてくるね」
「あ、お茶は?」
「いらない、大丈夫。行こう」
彩子が俺の腕を取った。
「お邪魔しました」
俺は彩子の母に再び頭を下げて、
彩子と共にリビングを後にした。
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