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「車で来てたんだね。夏月、運転慣れた?」
自宅の駐車場。
車に彩子と乗り込み、エンジンをかけた。
助手席の彩子を乗せたのは初めてで、
緊張していた。
「だいぶね」
慎重にアクセルを踏み車を発進させると、
彩子が俺に笑いかけた。
「今まで、何人くらい女の子を乗せた?」
「変な質問すんなよ」
大通りに出ると、
繁華街とは反対の方向にハンドルを切った。
「夏月、昔からモテたじゃん」
「それを聞いて、どうするんだか」
「オトナだなあって思うだけ」
「彩子はオトナになっても変わらないな」
「で、教えてよ。何人乗せたの」
「彼女1人だけだよ」
「彼女いるんだあ」
「2年も前に別れた」
「え、何で別れたの?」
「好きになれなかった、それだけ」
「やだ、何か冷たい」
「ホントのことだし」
「それ以来、乗せてないの」
「あとはヤローだけ。これで満足か」
「夏月の恋愛経験がほとんどないことが
わかった」
「彩子は、今の彼氏とどれくらい
付き合ってるの」
「1年。会社の先輩なの」
「もう会社には結婚することは言ったの」
「まだ。彼、長期の海外出張中で。
結婚しようって言われたのは、一昨日」
「それなのに、うちの親が知ってるのは
すごいな」
「そりゃあね。共働きで忙しい夏月の
親の代わりに育てたうちからしたら、
夏月んちは親戚よりも近いもの」
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