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「で」
「何?」
そこで、改めて彩子に視線を投げた。
「ホントに、彩子は結婚するの」
「え?」
「まだ間に合えばと思って、来た。
彩子は俺を選ばないで後悔しない?」
「すごい自信だね。びっくりしたよ」
そう言って、彩子は小さく笑った。
車通りのない道路の路肩に車を停め、
エンジンを切ると、彩子の右手を掴んだ。
「彩子にとって、俺は弟。それだけ?」
彩子の揺れる瞳を覗き込み、言葉を続けた。
「俺が昔から好きだったのは、彩子だけ。
言わなくてもわかってると思ってた」
「夏月」
「一度しか言わない。彩子と結婚したい」
「嘘でしょ」
「何だよ、プロポーズを台無しにすんなよ」
「だって、4年ぶりに会ったと思ったら、
いきなりそんなこと」
「言うだろ、このまま黙ってたら結婚の話が
進んじゃうんだから」
「うん‥‥そうだね」
「で、俺は彩子にとってオトコじゃないの」
掴んだ手を握る力を強めながら、
静かに彩子の返事を待った。
彩子が顔を上げ、俺を見つめる。
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