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「夏月を」
「うん」
「オトコとして見ないことがなかった」
「バカ、それを早く言えよ」
「だって」
掴んだ彩子の右手を引き寄せると、
自分の胸に当てた。
「いつから意識してくれてた?」
「夏月が中学に入った頃から」
「何があったんだよ」
「制服がかわいいなあ、っていう気持ちが
いつか夏月にも彼女ができるんだよなあって
思い始めたら寂しくなって。でも、夏月は
きっと同世代の女の子を選ぶと思ってたから
言えなかった」
「俺は生まれた時から彩子しか見てないよ」
「嘘よ。だって、彼女いたじゃない」
「どうしても大学で勉強したいことがあって
大阪に行った。彩子と離れたし諦めなきゃ
って思って告白してきた女の子と付き合った、でも諦められられなくて別れたんだ。
これがよそ見なら謝る。ごめん」
「私こそ夏月が好きだったのに、たくさん
男の人と付き合ってきちゃった‥‥でも、
何だかしっくり来なくて別れてきたの。
どうしよう‥‥今の彼氏」
「知らねえよ。別れてこいよ、バカ」
「だって、すごく優しいのよ?今更、
好きな人がいるだなんて言えないわ」
「じゃあ、そいつを選ぶ?」
「嫌よ、夏月を誰にも渡したくない」
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