53人が本棚に入れています
本棚に追加
「なあ、海外出張って言ってたけど、
そいつの地域は今何時?」
「ニューヨークだから‥‥13時間遅い。
21時半くらい?え、何するの」
「じゃあまだ起きてるな。連絡はLINEか」
「え、だから何を」
「俺が立ち会うから、LINEしろよ。
好きな人ができたので、結婚できません。
ごめんなさいって。書けるか?」
「夏月!」
「腹を括れよ、彩子。俺は明日、大阪に
帰るけど、卒業式に出たら戻ってくる。
今度はこっちで就職するんだ。彩子に
寂しい思いはさせない。俺を選べよ」
「夏月」
「彼氏に悪いって思って別れられないなら
俺は二度と彩子の前に現れないよ。
実家は近いけど彩子んちに立ち寄らなければ
そうそう会わないし、早急にひとり暮らしを
するよ。もちろん住所も教えない」
「夏月、あのね」
「まだ迷うつもり?じゃあさ」
そう言うなり、
一瞬だけ彩子の唇に自分の唇を重ねた。
そして頬を染め、俺を見る彩子に言った。
「これで、ただの幼なじみじゃなくなった」
「‥‥もう、焦り過ぎ」
「絶対に離さない、だから覚悟しろよ」
彩子の右頬を指先で軽く触れ微笑むと、
静かにそして強く彩子を抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!