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10分後、ホテルの部屋。
ソファに座り、シャワー待ちをしていた俺は
ベッドサイドに置かれた彩子のスマホが
気になっていた。
先程、彩子の彼氏にはLINEをしていた。
すぐ既読にするタイプだと聞いていたが、
返信を告げる通知音はまだ鳴らない。
奴が許さなくても、彩子は渡さないけどな。
内心そんなことを思いながら
彩子が浴室から出て来るのを待ったが、
それから数分経っても彩子は出て来ない。
あいつ、何してんだよ。
イライラしながらソファから立ち上がり、
浴室のドアの前に立った。
「彩子、まだ?」
声をかけて数秒置いたが、返事がない。
続いてドアをノックしてみたが、
やはり応答がない。
まさか倒れてるんじゃとヒヤッとして
ドアノブを回すとドアはあっさり開いた。
浴室に広がる熱気を感じながら
一歩前に進み、彩子に声をかけた。
「何してんの」
「あ、夏月」
こんな状況でゆっくり湯に浸かるなよ。
彩子は湯船にお湯を張り、泡の入浴剤を入れ
ジャグジーを楽しんでいたのだ。
唖然とする俺に、彩子は笑顔を見せながら
「緊張しちゃって。一緒に入る?」
と言った。
「ああ。そうする」
服を脱ぐために踵を返し、浴室を出た。
全く、あのマイペース振りは昔からだな。
セーターを脱ぎ、俺は大きく溜息をついた。
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