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「入るよ」
ドアを開け中に入ると、
一瞬だけ彩子と目を合わせてから
シャワーヘッドを握った。
ボディソープを片手に取り、
傍らにあった彩子が使ったと思われる
ボディタオルを使ってカラダを洗う。
「やっぱり、夏月はオトナだね」
声を聞き、そちらに視線を投げると、
湯船に浸かる彩子が目を細めて見ていた。
「当たり前だろ。一緒に入ってた頃でも
思い出したのか?」
「うん。今の夏月は私には眩しいくらい」
「彩子だってオトナの女じゃん」
髪は洗わなくていいかと言葉を続け、
シャワーでカラダの泡を洗い流していると
彩子が小さく笑った。
「何だよ」
「ねえ、LINE来てた?」
「来てない。彼氏、泣いてるんじゃない?」
「まさか」
「彼氏、何て名前?」
「公輝」
「堅そうな名前だな」
「性格もすごく真面目なんだよ」
「彼氏が日本に帰ってきたら、
俺も立ち会うから。絶対に別れろよ?」
湯船に近づき、足を入れた俺に
スペースを作った彩子を軽く睨みつけた。
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