雨の演奏会3

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今日は雨だ。弱い雨が朝から降り続いている。 私は今、学校にいて英語の授業を聞きながらぼんやりと窓の外を見ている。 「雨やまないかな。」 朝の登校で濡れた制服が肌にはりついて気持ち悪い。午後には乾いてほしいと思う。 授業はまだ始まったばかりだ。早く終わってほしい。   私は意識を授業に戻した。今日の授業は特別だ。 先生の授業の発表会だから先生のやる気が伝わる。 私は黒板の内容を写しながら授業を聞く。 ふと窓の外が気になり私はまた窓の外を見た。 すると、何やら小さなものがフワフワと浮かんでいる。よく見ると、小さい人だった。人形みたいだと思った。しかも5人いて皆ハンドベルを持っていた。その5人はフワフワしながら私の前に来た。 「私たちは雨の鼓笛隊です。今日はあなたに私たちのメロリーをとろけにまいりました。」 緊張していたのだろう。言葉がうまく使えなかったみたいだ。小人は泣き出し、他の小人達が慰めている。なんてかわいいんだろう。 気を取り直した小人たちはお辞儀をし演奏を始めた。ベルの音は幻想的で美しかった。 私は自分の幼い頃を思い出した。私は身体が弱かった。雨の日は特に体調を崩すことが多く保育園を 休んでいた。休みをとれば何故か午後には、元気になる。元気になった私は母に甘え忙しい母を困らせていた。母はなんとか私がひとりでも楽しめるようにおもちゃのハンドベルを与えてくれたのだ。 私はそれを鳴らして遊んだ。私が最初に引けるようになった曲は星に願いをだ。私は夢中で弾いていた。ベルを弾きはじめてから私はどういうわけか身体が強くなり、休みを取る日がへっていった。 きっと、心の状態がそのまま身体に現れていたのだろう。ハンドベルに夢中になることでネガティブなことを考える時間が少なくなったことがよかったのかもしれない。 小人たちは演奏を続けた。 「これが最後の曲となります。あなたのために。」 小人達が演奏を始めた。曲は星に願いをだった。 美しいリズムが私の気持ちを緩ませた。 気がつくと私は涙を流していた。 私は今、学校でいじめられている。 きっかけは、いつも遊んでいた友人達4人が突然私を無視し始めたのだ。私には理由はわからない。 前日まで仲良くしていたのに。 最初は無視だけだったから慣れてしまえばなんともなかった。しかし次第に物を隠されたり、私の持ち物を壊されたりした。目の前にある英語の教科書には落書きをされている。 私も人間だ。心が傷つくこともあれば、身体も傷つく。でもいじめは終わらない。 私は今日学校が終わったらそのままこの街からいなくなるつもりだった。現実の辛さから逃げようと思うのだ。他の人は耐えられることかもしれないが、私には無理だ。親を心配させたくないし、先生にも話せない。どうせ孤独なら最後に私の大好きな海に行きたいと考えたのだ。 私は手を挙げた。クラスメイトも先生も泣きながら手を挙げた私を見てびっくりしている。 「川上さんどうしたの。」 先生は私に声をかけてくれた。 「先生、私はいじめを受けています。いじめているのは、きわ、かな、みさ、さとこです。 私の英語の教科書はこのように落書きをされています。物を隠されることもありました。 私はもう限界です。どうか私を保護していただけないでしょうか。」 空には虹が出ていた。気がつくと鼓笛隊はいなくなっていた。私がこれからどうなるかは、わからない。わからないけれど、どこか清々しかった。
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