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坂本春馬
「死体ってね。そのままにしておくと膨らんでくるんだよ」
そう言い出した彼の意図が分からなかった。
「腹が膨らんでね。目と舌が盛り上がってくるんだ」
笑顔の彼から急にそんな話を振られた私は「そうなんだ」と当たり障りなく返すのが精いっぱいだった。
だが――どうしてこんな事を言い出したのか。その理由については十分に分かっていた。
彼――坂本春馬はクラスでいじめを受けていた。
過去形なのは、主犯であるクラスメイト『青木哲也』が行方不明になり終わったからだ。
いじめのきっかけは私のせい――と言えなくもない。
私と春馬が付き合いだしたのが気に食わない、と青木が彼をイジメだしたのだ。
殴られる蹴られるはもちろん、脱がされたりもしている、と春馬は私に打ち明けてくれた。
私は目に見えて憔悴する春馬の悩みを聞き、慰め、寄り添い続けた。
だがそんなある日。青木哲也が姿を消した。学校にも来ず家にも帰っていないという。
半グレ集団とも交流があると噂され、普通の生徒や教師から見たら厄介者でしかない生徒だったので学校側も積極的な対応をせず、両親でさえも探そうとしていなかった。
そしてそのまま1週間が過ぎた。
青木哲也は相変わらず行方不明のままで、自動的に春馬へのイジメも止んでいた。
そうして平穏な日々が戻り始めた――と思えるようになった、とある雨が降る日の事でした。
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