ナナ

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 母は母で、独特な価値観のお方でしたので、こんなことを思ったそうです。この世で最高峰の闘神であられたエリシア様と血の繋がりの濃い、グランティス王族と自分の間に授かる子供は、もしかしたら稀代の闘士として生まれる可能性があるのではなかろうか、と。  ……はい、大変心苦しいのですが、そうして生まれたわたくしはこのように期待外れの華奢な娘でございました。母は年始の挨拶のためだけにグランティスへ顔を出しますが、それ以外の時はこちらに寄りつきもしないのです。 「テラ君って剣闘士になってから六年間、一度も負けなかったんだよね? 例えばスーちゃんとテラ君が、スーちゃんのご両親みたいな関係になったとしてさ。今も他の国を周って活躍してるテラ君の本籍がグランティスにあって、最後はぜーったいこっちに帰ってくる。な~んて状況、国民は嫌がるどころか大喜びなんじゃないのかなー……あ、もちろん、テラ君の気持ちがどうなのかっていうのが一番大事だけど」 「サナはテラおにいさんもスーちゃんさまもだーいすきなので、おふたりのおこさまにあえたらうれしいです! みんなでいっしょにあそびたいですー!」  ノア様からのご紹介で、ナナ様達も皆、テラ様とは親しくされているのだそうですね。サナ様達は幼いながら、王宮から出られず退屈な日々。テラ様は人並み外れた体力がおありなのは間違いなく、こちらへお出でになると子供達の遊びに疲れ知らずで付き合ってくださるのだとか。想像するだけでなんとも微笑ましい……いつか、是非にも拝見したい光景です。 「ですが……わたくしは、自分が情けないのです。あのエリシア様の後を継ぐ女王になる者が、自分より遥かに強靭なお方を、王族の立場を利用して関係を迫るなんて……」  エリシア様でしたら、そのようなお相手がいたとしたなら。戦って相手を伏せてから関係を迫る……なんて手順を踏んだのではないでしょうか……いえ、それはそれで何か問題がありそうな気もするのですが。
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