告白

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「……驚かれ、ましたよね。ごめんなさい……わたくしは、十年前から、あなたをお慕いしておりました。テラ様は剣闘士の仕事はお好きでなかったと思います、けど……それでもひたむきに取り組むあなたの姿に、憧れて……あなたのように強くなれたらと思いながらも、わたくしは現状に甘んじて、ちっとも強くなんてなれなくて……」  ナナ様に言われた通り、この日のためにずっと考えていたのに、いざとなったら用意していた愛の言葉がなかなか出て来なくて、不要な言葉ばかり並べてしまうのは何故でしょう。誰かに愛されたいのならば、「こんなダメなわたくしですが、愛してくれませんか」なんて、まったくもって無駄な情報ではありませんか。  後ろ向きなことを言っている間は思わず、地面の芝生へ目を落としてしまっていました。わたくしは面を上げて、テラ様をまっすぐ見つめました。 「でも……でも、今だけは。勇気を出して伝えなければと思ったんです。わたくしは……あなたが、好きです。この気持ちを伝えないまま、他の誰かの(ひと)になるなんて、嫌だって……」  たとえテラ様がわたくしの気持ちを受け入れてはくれないとしても。この気持ちだけは伝えたかった。伝えもしないで諦めて、世の中の流れに身をゆだねて誰かの妻になるなんて。わたくしの……グレス・グランティスの生涯はそれで良しとは思えなかったのです。 「よろしければ……わたくしと共に、同じ一生を生きてくださいませんか? わたくしは、あなたと……テラ様と共にありたいです。これから、ずっと……」  テラ様はいつの間にか、最初のような戸惑いの表情ではなく、しぃん……と静かな、波紋すら立たないような動かぬお顔でわたくしを見下ろしていました。  そう間もなく、意を決したように一度だけ頷くと、すぐ目前にいたわたくしを抱き寄せました。力強く、抱きすくめます。  さすがに全力ではないでしょうが、腕の力は強く、息をするのを忘れてしまいそうにわたくしは硬直していました。テラ様は常勝の剣闘士。一見すると細身に見えますが、服の下にはしっかりと筋肉が根付いていたはずです。とても、硬く、引き締まった体であったのだと、わたくしは全身で感じていました。
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