告白

3/3
前へ
/34ページ
次へ
 これは、どうしたらいいのでしょう……わたくしは考えましたが、何のことはないとすぐに気付きました。わたくしはテラ様にとってはあまりにも唐突に、彼をこのような場に呼び立てて、一方的に気持ちを伝えました。テラ様の行動が唐突に思えようと、お互い様ではないですか。  わたくしは素直に身をゆだねて、体の力を抜きました。十年来、憧れてやまなかった、力強い彼の固く引き締まった体を思うさま感じさせていただくことにしました。 「……グレス様のお気持ちが本当なのか、確かめたかったんだと思いますよ。こうしてみても、グレス様が逃げないか」  成り行きを見守ってくださっていたノア様が、安堵の溜息を深く深く吐きだしてから、そう進言します。 「テラは言葉で伝えられないから、こうやって体で表現するしかないんです。言いたいことがあるのに言葉にできない。ボク達には想像するしかないけど、いくら想像したってわからないくらいに、辛い場面がたくさんあったんだと思うんです」  テラ様はわたくしの肩に両手を置いて少し身を離し、あらためて、わたくしの顔を見ます。未だ、どこまでわたくしの主張を信じて良いものか、考えておられるのだと感じました。 「ボクはほとんど喋らない母とずーっと一緒にいたので慣れてます。何も話さなくたって、そばにいる間、彼女がいつもボクを想ってくれてたのを知ってるから。それと同じで、テラがボクを必要としてくれるのがわかるから、一緒にいて楽しいし安心するんです。グレス様は本当に、何も話さない彼とずっと一緒にいて安らげますか?」  この十年、わたくしは遠目に彼を眺めていただけです。いくらずっと見つめていました、応援していましたと言っても、それは遠く離れた彼の凛々しい姿。私生活の、ありのままの彼と接したことなど、ほぼほぼありません。テラ様だけでなくノア様まで不安に感じてしまうのは、無理もないことでしょう。 「だから……とりあえず今晩、テラとふたりで過ごしてみてはいかがですか? たったひと晩、ふたりっきりで間が持たないようじゃ、とても一緒になんてなれないでしょうから」  ノア様は、自分はグランティスの夜の街遊びを楽しんできますので~、と、テラ様に手を振り、去っていかれました……。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加