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プロローグ:
一週間前、少女の平穏な生活は、些細な変化から揺らぎ始めた。
朝、いつものように家を出ると、何となく背後に気配を感じる。しかし振り向いてみても誰もいない。自分の気のせいだと思い込んで、登校へと向かった。それが何日か続くと、彼女は心底不安になった。だが、具体的に何がおかしいのかを自分でも理解することができず、混乱の中で日々を送ることになった。
帰り道でも同じだった。いつものように学校から帰る道すがら、再びその気配が。身体が硬直し、冷汗が流れる。だけど、後ろを振り返るとそこには誰もいない。ただ、無数の足跡と消えてしまったフラッシュの光だけが、その存在を示していた。
そしてある日、いつもは通り過ぎるスーパーマーケットで買い物を済ませ、家路につこうとした瞬間だった。一瞬、闇に包まれた世界がフラッシュの光で照らされた。パシャリ、という音と共に。
少女は驚いて振り向くが、その眩しさに目を閉じざるを得ない。そして開いたときには、再び周囲は静寂に包まれていた。ただ一つ、その場に残されたフラッシュの残像が、何かが起こった証だけを残していた。
「しまった……」
少女は唇を噛み締める。そして、何かが間違っていることを強く感じた。しかし、その正体を掴むことはできない。目を凝らして周りを見回すも、誰もいない。ただ、それだけだった。
しかし、その夜から、本人の名前と顔写真が載った雑誌が出回り始める。それが、少女の平穏な生活を一変させる出来事の始まりだったとは、その時の彼女には知る由もなかった。
それが彼女の前日譚。彼女の静かなる日常が、目まぐるしく変わっていく始まりである。
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