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魔法のメイク道具
いつもと同じようで、緊張する朝。
出掛けに自分の部屋を振り返ると、いつの間にか種類豊富になった化粧品と、メイク小物。
私にとっては、魔法の道具。
病気がちで顔色が悪かったのをごまかそうと、人より少し早く覚えたメイクと、病室で描き続けていた絵。
その力で、私はあなたを追いかける。
欠点を補うためにやっていた事が、夢を叶えることに繋がるなんて、思ってもみなかった。
「それなら僕はずっと、ピアノ弾くよ。
どこにいたって弾いていれば、
君に届くかもしれない。
聴こえるかもしれない……ね?」
あなたは、覚えていますか?
10年前、幼いながらにそう言って私を励ましてくれた子がいた。子ども同士の会話だし、あなたは今とても忙しいだろうし、きっと忘れてる。それでも、いいの。
私にとっては、明日を生きる心の支えになった事実は変わらない。道しるべとなってくれて、ありがとう。やっと、この日がきたの。
これから、あなたのいる世界へ行きます。
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