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その頬に触れる
ーーバタバタバタ
廊下をすごい勢いでADさんが走ってきた。
「すみませんメイクさん!演出側の要望で、20分後に披露する二曲目メンバー全員の顔に蝶をペイントしてほしいそうです!」
「え?!20分で全員??」
今まで見たなかで過去一番、先輩が慌てている。でも私たちもプロ、最善を尽くすしかない。 覚悟を決めた先輩が、急いで返事をする。
「いけそうですか?!」
「わかりました、やります!」
「はい、ではアーティストさんいったんこちらへ戻りまーす!」
一気に楽屋が、慌ただしくなる。先輩がメイクチームの指揮をとる。
「この前の番組で蝶のステッカーは使い切ってる、時間はない!いいね?失敗してる時間もないけど、やるしかない……いい?アイライナーで描くよ!!」
急きょアイライナーで、頬に蝶を描くことになった。大変なことだ、メンバーは5人。それでもプロ同士の現場、できるだけ要望に答えるしかない。
新人の私にも、何かできることがあるだろうか。そう思って先輩の方を向いた瞬間、事態は衝撃的な方向へと進んだ。
「李音!!絵描けるよね?ごめん私たぶん色は塗れるけどベースのライン無理だから、李音に任せる!まず李音が一人ずつラインを描く!順に他の人で着彩!やるよ!」
『はいっ!!』
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