新しい扉

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新しい扉

よし、行こう。 平常心とはほど遠い、不自然に高鳴る鼓動を抑えながら、私はその扉をノックする。 ーーコンコン 「失礼します」 「はい、どうぞー」 「本日のメイク入らせていただきます、よろしくお願いします」 「お願いしまーす」 ここは、とあるアーティストグループの楽屋。先輩の挨拶のタイミングに合わせて、私もおじぎをする。本当はそれだけで精一杯で、メイクバックを抱える手に汗が滲む。しっかりしろ、私。こんなに緊張したところで、裏方の私に注目する人なんていないんだから、仕事に集中! 私は新人メイクなので、荷物を広げて先輩の仕事がすぐ始められるように動く。ここが誰の楽屋かなんて、考えちゃいけない。今日だけはそれに気を取られたら、まともに仕事なんかできない。 「ふぅ…」 メイク道具を一式、先輩好みの配置にセット完了して、小さくひと息吐いた。 「新人さん?顔色良くないよ、大丈夫?」 ふいに、グループで1番スタッフと気さくに話すタイプのメンバーが、小声で私に聞く。 「え…あ、はい!大丈夫ですすみません!」 驚いた私は、せっかく小声で聞いてくれた気遣いを台無しにする大きな声で体調不良を否定した。 「ふはは、頑張ってね」 「あ、ありがとうございます……」
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