魔法のメイク道具

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

魔法のメイク道具

いつもと同じようで、緊張する朝。 出掛けに自分の部屋を振り返ると、いつの間にか種類豊富になった化粧品と、メイク小物。 私にとっては、魔法の道具。 病気がちで顔色が悪かったのをごまかそうと、人より少し早く覚えたメイクと、病室で描き続けていた絵。 その力で、私はあなたを追いかける。 欠点を補うためにやっていた事が、夢を叶えることに繋がるなんて、思ってもみなかった。 「それなら僕はずっと、ピアノ弾くよ。    どこにいたって弾いていれば、    君に届くかもしれない。     聴こえるかもしれない……ね?」 あなたは、覚えていますか? 10年前、幼いながらにそう言って私を励ましてくれた子がいた。子ども同士の会話だし、あなたは今とても忙しいだろうし、きっと忘れてる。それでも、いいの。 私にとっては、明日を生きる心の支えになった事実は変わらない。道しるべとなってくれて、ありがとう。やっと、この日がきたの。 これから、あなたのいる世界へ行きます。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!