第二話 王都に彷徨う魂たち

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 ()(ふね)から王都に向かう道を、牛車が進んでいた。  昨夜に降った雨のせいで道は()(かる)み、乗っている人間のほうも楽ではなかった。  湿気と蒸し暑さ、(ぜい)をこらした()(うし)(まと)っているせいで暑いこの上ない。開いた(かわ)(ほり)(おうぎ)(あお)ぐも、一向に涼しくはならない。 「まったく、まだ邸に着かぬのか……!?」  イライラをぶちまける男に、(うし)()(わらわ)が申し訳なさげに伝えてくる。 「車輪が泥濘みにはまった様子……、しばらくお待ちを」 「早く致せ!」  (ふん)(ぜん)と座り直した男の前に、それはいた。 「なにゆえ、こんなモノが……」  それはシュルシュルと床を這い、男の前で(かま)(くび)をもたげた。     なにゆえ――。  男は(むな)しく(そら)を見上げていた。  さっきまで、己が乗っていた牛車の音が遠ざかっていく。  ああ、なにゆえわたしはここにいるのか。  なにゆえ、誰も聞こえぬのか。  なにゆえ――。
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