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それは、幾つも揺れていた。
ぽつりぽつりと浮かび上がり、時には激しく、時には儚げに、青く燃えながら冥がりの地で揺れていた。
――逃げなければ。
その光景に慄然し、少年は必死に駆けた。
周りに光はなく、ただ青く燃える鬼火が、彼の胸間にまで冥がりを広げるようで、たまらず彼は逃げた。
――逃げなければ。早く。
はたして自分は、本当に前に進んでいるのか。
走っても走っても、先には何も見えない。
――無駄ダ。お前ハ、コチラ側ノ存在。代リニ、ソノ躯ヲ寄越セ。
鬼火は幾つも燃えて、彼の行く手を阻む。
その危急に、彼は絶望感に苛まれる。
――ああ、僕はこのまま陥ちてしまうのか。
――せいめい。
誰かの声がして、少年は顔を上げた。人の手がそこにあった。
今この手を取らなければきっと後悔する。
少年は藁にもすがる思いで、その手をしっかりと握った。
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