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――ああ、なにゆえ……。
ぽつりと浮いた青い火霊が、縄張りである池の畔で揺れて嘆いていた。その嘆きに耳を貸す者はなく、そこでは蛟が人を喰っていた。
恐らくその火霊は、喰われている者の魂魄なのだろう。
あまりもの惨烈に、蛙の化生は戦慄を覚えたという。
彼も妖の一種だが、人は喰わない。
妖の中にはその妖を喰うモノもいる。次は己かも知れぬ。
そして自分も嘆くのだ。
静かに暮らしていただけなのに、なにゆえと――。
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