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その雨を、物言わぬソレが見上げていた。
白い骸となった人のなれの果て。それが、そぼ降る雨に打たれていた。
――ああ……、なにゆえに。
恐らく自身に何が起きたのかわかっていないのだろう。
あっという間だったのだから。
黒く窪んだその目は、もう光を宿さない。口は言葉を出せない。
肉を剥がされ骨となり、なにゆえと嘆く念だけが残る。
――また、人が喰われたぞ? 安倍晴明。
いつからなのか、雨が降ると華が咲く。
骸の横で、その華は揺れていた。まるで燐火の如く、青い死人花が。
蛙の化生は暫くそこにいて、それらを見ていた。
人間たちには聞こえないのだろうか。
なにゆえと、嘆くあの声が。
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