第一話 すまじきものは宮仕え

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 その雨を、物言わぬソレが見上げていた。  白い骸となった人のなれの果て。それが、そぼ降る雨に打たれていた。    ――ああ……、なにゆえに。  恐らく自身に何が起きたのかわかっていないのだろう。  あっという間だったのだから。  黒く窪んだその目は、もう光を宿さない。口は言葉を出せない。  肉を剥がされ骨となり、なにゆえと嘆く念だけが残る。    ――また、人が喰われたぞ? 安倍晴明。  いつからなのか、雨が降ると華が咲く。  骸の横で、その華は揺れていた。まるで(りん)()の如く、青い死人花が。  蛙の化生は(しばら)くそこにいて、それらを見ていた。  人間たちには聞こえないのだろうか。  なにゆえと、嘆くあの声が。
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