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「でも」
「俺は、枕をしないけど、寂しい思いをさせちゃうとそれも信じられなくなっちゃうだろうし」
「そんな、こと……」
真摯な律に対し、女性がはっきりと否定することはできなかった。律は責めることなく、眉尻を下げて笑う。
「俺はね、ユウちゃんが大事だよ。毎日ちゃんと社会に出てがんばるユウちゃんが大好きなんだ。俺の存在が少しでもユウちゃんの支えになれているなら、それだけで嬉しいよ」
「うん……でも、私も律くんのためにできることがあるなら」
「俺は……俺のせいで、ユウちゃんの生活が壊れるなんてこと、あってほしくないんだ」
律の笑みは穏やかで、やわらかい。女性のすべてを受け入れ、包み込んでいた。
「すごく好きだからこそ、ユウちゃんは自分のことを大事にしてほしいって思ってる。恋人として付き合うとしたら、そうだな……」
考えるように目を伏せる。やがて、輝かしい笑みを女性に向けた。
「ホストを辞めたとき、かな」
†
繁華街の地下にある老舗の高級ホストクラブ、「Aquarius」。
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