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辞める理由、働く理由
sweet platinumの事務所に、優希の声が響く。
「……で、こうすると、ここで顧客管理ができるようになるんで」
部長のデスクに座り、となりのパソコンの画面を指さしながら続ける。
「たとえば女の子がブラックにしてる客だったら、ここに追加の情報として書き込むと、すぐに把握できるようになります」
真剣に画面を見つめるメイコがうなずき、キーボードで操作していく。
「なるほど、こうね」
「はい。簡単でしょ?」
深夜を過ぎた今、客からの依頼は落ち着いている。そのあいだ、若い優希が先輩のメイコに、新しく導入した管理ソフトの使い方を教えていた。
画面をずっと見ていたメイコが、疲れたようにため息をつく。
「意外と覚えることが多いのねぇ」
いつもおろしている髪を後ろで結び、前髪をとめていた。眉間にしわがよったまま、固まっている。
「わからなかったらまた教えるので大丈夫っすよ」
長いこと説明していた優希だが、底抜けに明るく笑っていた。メイコに顔を向けたまま腰を上げる。
「休憩します? あったかいお茶いれますね」
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