10人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとう優希くん」
デスクを離れ、引き戸が開きっぱなしの洋室へ向かう。手前で立ち止まり、中に声を放った。
「社長も飲みますよね?」
洋室のソファに座るのは律だ。ローテーブルにノートパソコンを置き、前のめりに画面を見つめている。
歓楽街が誇るナンバーワンホストは、デリヘル会社の社長でもあった。アフターも枕も、しないのではなくできないのだ。
「ん、ありがと。新人さんのプロフィールちょっと変えるから確認しといて」
「はーい」
優希が離れていくと、律はキーボードをたたき始める。
律が見すえる画面に映るのは、メイコが面接した新人女性の紹介ページだ。
優希が作った仮のプロフィール内容に、男性が喜びそうな紹介文を付け加え、保存する。
次に、プロフィール画像を全体で表示させた。待機部屋でスタッフが撮ったものだ。
イスに座って足をななめに流すポージング。いかにも業界に入りたての新人、といった印象を与えている。顔にモザイクがかけられても、真面目で硬い雰囲気を隠せていない。
彼女には後日、プロのカメラマンによる撮影が控えている。どのようなポージングが適切か、どう修正してもらうか、律は真剣に考えていた。
「そういえば聞きました?」
最初のコメントを投稿しよう!