辞める理由、働く理由

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 キッチンに移動した優希の声が、洋室にまで届く。優希は紅茶の葉とお湯を、ポットに入れて蒸らしていた。 「Candy(キャンディ)のヤエコちゃん、彼氏できたらしいっすよ」  Platinum Candy(プラチナム キャンディ)Platinum(プラチナム)系列のレズビアン専用デリヘルだ。金額設定は高めだが、質のいい女性がそろっている。  その中でもヤエコは出勤率が高く、評判のいい人気嬢だ。  パソコンの画面を見すえるメイコが、マウスを動かしながら気だるげに返す。 「あーそういえば、ヤエコちゃんって男もオッケーだったっけ?」 「はい」  優希はカップに紅茶を注ぐ。湯気とともに、香りが立ち込めていた。 「しっかり者のヤエコちゃんが、めっちゃのろけてたんですよ。写真まで見せちゃって。よっぽど嬉しいんでしょうねぇ」  最初についだカップを律の元へ運び、ローテーブルに置く。律は二人の会話に入ろうとはせず、他の女性のプロフィールを確認していた。  キッチンに戻った優希は、二人分のカップを持ってメイコのもとへ向かう。 「ここに置きますね、メイコさん」
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