夕方の事務所にて

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 女性の体がびくりと震えたのを、メイコは見逃さない。包み込むような笑みを浮かべる。 「大丈夫ですよ。ウチは女性が指導を行います。今日は講師がいらしてますから、そちらに案内しますね」  じゃあ、とメイコは席を立ち、洋室を出る。女性もぎこちなく立ち上がり、メイコのあとをついていった。 「それが終わったら、プロフィール用に写真を撮らせてください。源氏名やプロフィールはこちらで用意しますので、それに準じた行動をお願いします」  二人はリビングを通り、玄関から外へ出た。           †  デリヘルグループsweet platinum(スウィートプラチナム)。経営している三店舗のうち、二店舗が会員制の高級デリヘルだ。どの店舗も質の高い女性をそろえていた。  事務所は、都心から少し離れたマンションの中にある。四部屋あるフロアを、会社名義で二階分借りており、嬢の待機場所や指導場所、宿泊所として利用していた。  先ほどまでメイコがいたのは、来客用に使う洋室だ。隣接するリビングには、スタッフのデスクがまとめて設置されている。  デスクに座る優希(ゆうき)がふわふわとした声を放った。
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