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「それ断っていいやつ?」
「まず内容を聞けよ」
店長は顔をゆがませ、ため息をつく。
「千隼のようすが、最近おかしいんだ」
「千隼さん?」
律は周囲を見渡した。少し離れた場所にある卓席で、幹部たちがミーティングを行っている。その中に、千隼がいた。
真剣に話し合う千隼を見すえながら、律はコップに口をつける。熱さでいったんはなし、息を吹きかけて冷ました。
千隼と目が合いそうになったところで、店長に向き直る。
「おかしいって、どういうふうにおかしいわけ?」
卓席での千隼は、普通に話し合いができているように見えた。少なくとも店長が心配するほどでもなさそうだ。
「それがな~、なんて説明したらいいか」
店長は腕を組み、眉間にしわを寄せた。
「なにかあるのは間違いないんだ。ただの勘でしかないけどな。……ときどき妙に上の空なんだよ。かなり疲れ切った顔してるときもあるし」
店長にしては歯切れが悪い。律は白湯をちびちびと飲んでいく。
「よくわからないけど、幹部の仕事と客の対応に支障がないならいいんじゃないの?」
「今のところはな。でもあいつ、この世界じゃ珍しいくらい真面目で仕事熱心だろ。売り上げもどんどんのびてるし」
律は素直にうなずく。
千隼の働きぶりに関しては、正直、感心していた。
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