夕方の事務所にて

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「デリヘルで働くにはおとなしすぎる女性でしたね~」  黒髪にグレーのパーカー。見た目はどこにでもいる普通の青年だ。  斜めとなりのデスクから返事が返ってくる。 「あれはあれで需要があんだよ」  黒のスーツを着た中年男性が、頬づえをついている。目つきが鋭く、眉間のしわも深い。全身に肉がつき、スイカでも入れたかのような腹が重々しい。  こう見えてsweet platinum(スウィートプラチナム)の部長だ。 「いかにも旦那に恵まれない人妻って感じがあんだろ」 「ってことはplatinum latte(プラチナム ラテ)のほうですかね」 「そうだろ。年齢的にもな」  platinum latte(プラチナム ラテ)は、系列の中でも熟女を専門とした店だ。熟女とはいえ、その年齢は三十代から四十代。人妻もいればそうではないものもいる。 「いつまで続くと思います?」  部長は首をかしげた。 「いやあ、ありゃすぐやめるだろ」 「いやいや、あの年で、決心して、ウチ来たんすよ? 続くでしょ~」 「あのな、風俗なんて飛ぶのが当たり前の世界だぞ。絶対にすぐやめるね。賭けてもいい」  女性の案内を終えて戻ってきたメイコが、リビングに入ってくる。それでも二人は話を続けていた。 「いいですよ~、じゃあいくら賭けます?」
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