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すでに運ばれている料理を手で示す。小さめのハンバーグと、ライス。
律はナイフとフォークを手に、切り分けていく。
「律くんは、もっと食べてもいいんだよ? 高いお酒は頼めないけど、料理のお金くらいは払えるから」
「ありがとう。でも、こう見えて俺も緊張しちゃってるからさ。あんまり食べられそうになくって」
苦笑する律に対し、女性は安どした笑みを浮かべる。
「あ、そうだ、ユウちゃん。今度はちょっと早めに出て、京町料理のお店に行かない? ユウちゃんの雰囲気に合いそうなかわいらしい場所見つけたんだ。今度は俺がごちそうするよ」
「えーっと……」
不安げに目を伏せる女性。律は女性の心境を察し、変わらない口調で続ける。
「あ、でも、無理しないでね。ユウちゃん、お仕事の都合もあるだろうし」
「うん、でも……どうしようかな。やっぱり律くんと一緒にいたいし」
「え、ほんと? 嬉しい! 俺もユウちゃんと一緒にいたい。……でも、俺のことよりお仕事のほう優先して。頑張ってるユウちゃんもステキだよ」
「……ありがとう」
穏やかに笑みを浮かべる女性は、ハンバーグを少しずつ食べ進めていく。
「律くんに会うと、嫌なこと全部、吹き飛んじゃうな」
「そう? それならよかった」
「律くんと付き合ったら、幸せなんだろうな……」
ハンバーグを切っていた律の手が、止まる。
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