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「まあ、でも、付き合ってる人、いないわけないよね。律くん、すっごくかっこいいし。私よりステキな女性もたくさん寄ってくるだろうし。私なんか、ね、全然……」
「付き合ってる人はいないよ。私なんかとか言うの、やめてよ」
律は手を止めたまま女性を見つめる。ほほ笑み、甘い声を出した。
「ユウちゃんは温厚だしかわいいし、真面目だしお仕事がんばってるし、いいところがたくさんあるじゃん」
「でも私なんて、普通だし。私がやってる仕事なんて、誰でもできるし。稼ぎもたいしたことないし」
「それでもちゃんと責任もって続けてるところがすごいんだよ。簡単にできることじゃないよ。ユウちゃんのそういうところ、俺は好きだな」
満面の笑みを浮かべる律に、女性は頬を染める。
「ほんと……?」
「ほんとだよ。ユウちゃんが自分の仕事を大事にしてるからこそ、俺の仕事のことも大切にしてくれるんだろうね。こまめに連絡くれたり、律儀に会いにきてくれたり……。ホスト相手にそういう人、なかなかいないから」
律はすかさず眉尻を下げ、悲哀の混ざる声を出した。
「でも、だからこそ、ユウちゃんとは付き合えないと思ってる。俺と付き合うことで、絶対に嫌な思いすると思うから。俺は、ユウちゃんが俺のことで傷つくのは、嫌なんだ」
律と同じような表情で、女性は目を伏せる。
「私が、もっとお金を出せれば」
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