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俺と嫁は三年前、協定を交わした。
俺はゲイで結婚できない。
嫁は他に好きな男がいて結婚したくない。
が、親の体裁のために結婚せざる負えなかった。
だからお見合いの日にお互い全てをぶちまけて協定を結んだ。
三年間、夫婦として頑張ろうと。
形だけの偽装夫婦を。
結婚式の前夜、あいつと目が合うまでは俺にとっては簡単なミッションだった。
あの瞬間に俺はあいつに完全に落ちた。
一ヶ月に二回、二時間しか会えないことが回を増すごとに辛くなっていった。
満足できなくなった。
タイマーなんて無視してずっと抱き合っていたかった。
が、帰らなくてはいけない。
俺は嫁の家族と同じ家に住んでいた。
それも嫁の父親、社長のご命令だった。
だから家にいる間は良き夫、良き妻を演じなくてはいけない。
それが思った以上にストレスだった。
毎日のように姑に
「まだ子供はできないのかしら?早く孫の顔が見たいわぁ。」
と言われる。
挙げ句の果てには排卵日まで把握される始末。
そんなストレスをあいつと会うことで解消していた。
嫁も好きな男と会ってた。
お互い、同じ悩みを持つもの同士慰め合いながら頑張っていた。
「あいつさ、多分俺のことなんかどーでもいいんだよね。セフレとしか思ってないというか。」
「私たちのこと話しちゃえば?」
「話したら今まで嘘ついてたことバレてもう二度と会ってくれないかもしれない。」
「そんな関係ならいつか終わるよ。」
俺には勇気がなかった。
だから嫁はあいつに会いに行ったんだと思う。
で、それがきっかけで結局俺たちは決別してしまった。
後悔してる。
毎日、暗い顔をしてる俺を見かねて嫁が言った。
「離婚するか!三年頑張ったし、そろそいいでしょ。あんたも社長として認められただろうし。」
「え?」
「親孝行は終了よ。私も自分の人生謳歌するわ。」
嫁は、彼女は決断したら行動するのが早かった。
うちの両親も呼んで離婚宣言をした。
俺たちは誠心誠意頭を下げた。
「てか、偽装だったんでしょ最初から。」
と彼女の妹が言った。
「そうね。偽装でした。でも彼とはいいパートナーになれたと思う。夫というよりは同志ってやつかな。」
「俺も同意見です。俺が社長になれたのも彼女のサポートがあったからです。今日までありがとう。」
親父さんは黙っていたが急に立ち上がり拍手して俺たちを称えてくれた。
姑はフラフラとどこかへ消えた。
なんとなくいい感じにフィナーレを迎えることができた。
親父さんには引き止められたが、さすがに社長として留まる勇気はなく会社を辞めた。
そしてその足であいつの家に向かった。
洗いざらい全てぶちまけて、それでなんともならなかったら。
いや、死ぬまで粘る!
ぐらいの気持ちで会いに行った。
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