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問答
ゆっくりと唾をのみ込んでから、俺はソイツを盗み見ながら話し出した。
「き、君はどう思うんだい?」
そう問い返すとソイツもビクッと大きく一回体を揺らし、更に大きい目で見つめ返してくる。
ドキドキしながら、なんて言われるのだろうと待った。
しばらく待った。
……随分、待った。
あ、あれ? 一体どうしたんだろう? 河童らしいソイツは俺から目をそらさずに、微動だにしなくなった。
視線はしっかり合っている。お互い見えているはずだ。かれこれ2分くらいはこうしている気がする。
いくら俺が暇だからといって、このままではつらい。
耐えられなくなって口を開きかけた時に、のそのそと話し出した。
「ええ? 吃驚したあ」
驚いていただけかよ! と心中で大きく動きもつけてツッコミを入れる。
「君は、俺に話しかけてきたんじゃないのか?」
大きい目を鳥のように下から上へとまぶたを閉じ、緩慢な動きで自身の皿をなでる。その手には、やはり水かきがついていた。
「そう……だねえ」
会話のテンポが遅すぎて、気が抜ける。
俺は座っている土手の草を指でいじりながら待った。
「君は、ここで何をしているんだい?」
のんびりと返事を待つ。
「ええと、ぼくはねえ探しているの」
「探している? 何をだい?」
河童について聞かれる前に、質問攻めにしてお茶をにごす作戦だ。
どうやら作戦は上手くいっているようだ。
返答には時間がかかるので、俺はまた川の流れを見つつ考え込んだ。
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