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思考
本来なら、こんな河童? と話している場合ではない。
大体、平日の昼からいい歳の大人が川の土手で足を抱えて座り込んでいるなんて滑稽すぎる。
自分の掌を見つめて、昨日母親に言われたことを思い出す。
『ごめんなさい。うちの陶芸工房、もう無理そう……。母さんひとりじゃ、生徒さんも減る一方で……お父さんも亡くなって随分立つし、あなたは……』
そうさ! 俺には陶芸家としての才能なんてないさ! 30歳になっても思い通りの皿も作れない。しかも、教えるのも下手。自分が一番わかっている。
……それでも、それでも俺は陶芸がすきなんだ。
どうしても諦めたくない。けれど……。
もう無理なのだろうか?
「ううんと、お皿だねえ」
ハッと我に返り横を向く。
そうだった……河童? ぽい奴と話している最中だった。
「……お皿」
呟くようにオウム返しして、ソイツの頭にのっているひび割れた皿へ目線を移す。
そうだ。
「なぁ、君。2週間いや、3週間後にここに! 同じ時間に、ここに来てくれないか?」
多分、不思議そうな顔をしている……はずの無表情で、首を極度に左に曲げた。
ブルルと身震いしながら、見る。
お、折れてる……? 首、折れてる……。
少したってから、グルリと首を元にもどして答えがある。
普通に怖い。
「いいよお。ぼく、最近、ここにずっと、いるのお」
嘴の両端がクルっと上に持ち上がり、笑っているかのようだった。
その姿は、さっきの首折れている姿よりは愛嬌があって……可愛い……か?
まあ、そんなことはどうでも良い。
俺はパパッとパンツの尻についた草を払いながら立ち上がり、じゃあと別れの挨拶をして去った。
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